クラウドソーシングの拡大は学歴社会を加速させる

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近年、労使関係の新しい形としてクラウドソーシングが徐々に広まり始めている。インターネットを介して仕事の受発注を行うもので、今後もITの発展とともに日本国内でも拡大していく流れであることが予想される。

特に、私と同世代の20代半ばから30代後半くらいまでの方にとっては、人生設計にも関わる重要なトレンドであると考えられる。今回は、このようなトレンドの中で我々はどのような行動をし、どのような考え方で仕事と向き合っていけば良いのかについて考察していきたい。

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クラウドソーシングとは

まずはじめに、クラウドソーシングについて、その仕組みや既存の雇用形態の比較、国内における主なプレイヤーなどの概要を紹介する。

インターネットを通じた受発注

クラウドソーシングの最大の特徴は、仕事を発注する側と受注する側はインターネットを介してマッチングされるところにある。マッチングまでの一般的な流れとしては概ね以下の通り。

1.発注側と受注側それぞれ、クラウドソーシングのプラットフォームサービスに登録する

2.発注側は、依頼したい仕事の内容をプラットフォームに掲載し、求人する

3.受注側は、募集要項や自身のスキルと照らし合わせ、応募の判断を行う

4.発注側は、応募してきた「不特定多数」の受注者候補たちの中から、経歴やスキルなどにより選定をする

5.選定された受注者と発注者がプラットフォーム上で契約を締結する

ここで注目したいのは、第4項にある「不特定多数」というキーワードだ。クラウドソーシングでは、クラウド(群衆・集団)からスキル・労働力を募ることになる。ここが、特定の業務委託会社や派遣会社などに委託する「アウトソーシング」とは異なるポイントである。

取引される主な仕事内容

クラウドソーシングを利用して発注される仕事は、企業活動内で行われるすべての業務が対象ではない。例えば、財務や人事のような専門性の高い社内業務をクラウドソーシングで発注するのは難しいだろう。

一方、システムや業務ツールの開発、データ入力や登録業務など、社内で業務を行う必要性の薄い業務に関してはクラウドソーシングが強みを発揮する。インターネットを介して遠隔で業務を行うことができるため、メールやSNSをうまく使えば、対面どころか電話すら不要だ。

また、キャッチコピーやロゴのデザインなどをコンペ形式で大量に募集して、優秀な作品を採用するという使い方もできる。通常、コピーライターやデザイナーなどに複数案の提示を依頼する場合、1案ごとに依頼料を請求されるため、多くの候補を比較して選定を行おうとすると、その分だけコストもかさむことになる。クラウドソーシングを活用すれば、採用する案の発案者にのみ報酬を支払えば良いため、従来では実現できないような数の候補から選定を行うことができる。

従来の雇用形態との比較

従来、雇い主と従業員の関係の説明としては、正規雇用・非正規雇用の区別に関わらず、従業員が雇い主に労働力を提供し、その対価として雇い主から従業員へ報酬が支払われるものというのが一般的だろう。労働力を商品と見立て、雇い主による労働力の買い取りが労使関係の基本構造であると言える。就活市場や転職市場における労使間のパワーバランスを示す、「売り手市場」「買い手市場」という言葉は、このような労使間の関係性が由来している。

また、労働者は、自身の労働力は基本的に所属する会社へ「独占販売」を行うことが求められる一方、使用者は継続的な雇用や種々の福利厚生によって労働者の生活を保護することが求められている。

クラウドソーシングに関しても、使用者と労働者の間で労働力のやり取りがなされるという点においては従来の雇用形態と一致している。しかし、労働者が労働力を提供する相手が特定の使用者のみでなく、複数の使用者となるところが従来の形態と大きく異なる点である。

労働力の所有からシェアへ

つまり、クラウドソーシングにおいては、労働力は買い取るものではなくシェアするものと考えることができる。人材は特定の企業が保有するものでなく、業界全体や国全体、あるいは全世界で共有するオープンリソースへと変わる。

日本における主なプレイヤー

国内でのクラウドソーシングプラットフォーム提供者としては、「ランサーズ」「クラウドワークス」が2大事業者として有名である。2サービスはそれぞれ大手の法人顧客も抱え、知名度・実績ともに拮抗している状態だ。株式会社クラウドワークスは、ランサーズに先んじて2014年12月に東証マザーズへの株式上場を果たしている。

また、その他にもライター業務に特化した「shinobiライティング」や、近所の情報検索に特化した「Any+Times」など、独自性を持たせたサービスが存在している。

事業の特性上、参入障壁が他の業界と比較して低いとされるため、市場が大きくなるにつれて事業者も増え、競争の激化も予想される。既存の事業者にとっては競争力のあり選ばれるプラットフォームサービスの構築が急務である。

国内の市場規模の現状と予測

2013年時点での市場規模は215億円と言われ、同年の民間給与所得192兆円の0.01%にとどまっている。しかし、市場は毎年急成長を続けており、今後の20年ほどで市場規模は10兆円を超えるとの予測もある。

二つの「クラウド」

ちなみに、クラウドソーシングにおける「クラウド」とは、英語で綴れば”crowd”(=群衆・集団)であり、「クラウドファンディング」などと同じものである。一方、「クラウドコンピューティング」などにおける「クラウド」は”cloud”(=雲)と、別の単語であることに注意が必要だ。

クラウドソーシングがもたらす変化

以上が、クラウドソーシングという新しいトレンドの概要である。これより、このトレンドが社会や企業活動にどのような影響をもたらすのかについてまとめる。

潜在的労働力の顕在化

インターネットを介して発注者と受注者が繋がることにより、労働条件における地理的・時間的・年齢的な制約はなくなる。そのことにより、従来は労働力として利用することができなかった、遠隔地の人材や子育て中の専業主婦、リタイア済みのシニア層なども労働市場に参加できるようになる。

地理的制約のクリア

オフィスに出社したり対面で打ち合わせを行ったりする必要がないため、地方在住者が東京の会社の仕事を受注することも容易になる。

時間的制約のクリア

会社に雇用されている身であれば、一般的な就業時間内に業務を行う必要があるが、クラウドソーシングであれば受注した仕事の締め切りさえ守ればどの時間に作業を行っても問題がない。家庭で介護や子育てなどに携わり時間が自由になりにくい人も、仕事を受注できる可能性が出てくる。

年齢的制約のクリア

定年を過ぎ、一般的な企業では雇用されるのが難しいシニア層でも、発注側さえ了承すれば仕事を得ることができる。

「与信」の重要性の高まり

サラリーマンは、所属している会社から任せられる仕事をこなし、その報酬として給料を受け取ることで労使関係が維持されている。(「窓際族」「社内失業」という問題もあるが、ここでは触れない)

当然のことのように思えるかもしれないが、ここには見落としがちなポイントが隠されている。

なぜ自分に仕事が与えられるのか

今の自分になぜ仕事があり、なぜ給料をもらえているのか。会社と従業員の間には労使契約はあるものの、普段の業務の中で上司から「会社と君の間の労使契約に基づき、この仕事をお願いしたい」などと言われることはないはずだ。

ここで、「なぜ会社・上司は自分に仕事を依頼してくれるのか」という疑問が湧いてくる。「上司と部下の関係だからである」と答えてしまうのは簡単であるが、あえて分解すると以下のようになる。

1.会社の採用試験に合格しているから

2.社員証や名刺など、社員であることを証明するものを持っているから

3.その証明を他の社員、特に上司が信用しているから

会社の採用試験に合格した上で、それを会社が証明してくれる仕組みがあり、その仕組みを上司が支持していることが、自分に仕事が与えられるための条件と言える。

自分の給料の源泉は何か

すなわち、「仕事を与えるに値するだけの能力を持った人材である証明」があり、その正当性を会社が保証してくれることこそが、サラリーマンの仕事の根拠であり、給料の源泉である。

1.仕事を与えても問題なく、期待の通りの成果を上げる可能性が十分に高いことが何らかの形で提示されている

2.その提示の正当性を、信頼の置ける組織・機能が保証している

このことはクラウドソーシングにおいても同様である。

各プラットフォーム事業者の「与信」に関する工夫

クラウドソーシングのプラットフォーム提供者は、受注者のプロフィール欄を充実させ、これまでの経歴や保有資格などがわかりやすくなるような仕組みを作ることにより、個人への与信を行っている。

逃げきれない世代

クラウドソーシングの拡大はかなりのハイスピードではあるものの、現時点で社会人としてのキャリアが折り返し地点を過ぎている40〜50代の方々が定年までの間に現在の雇用形態・労働環境が大きく変わることはないと思われる。

これは私自身の勝手な推測であるが、20〜30代の世代の人は、このクラウドソーシングの流れと、それによって引き起こされる種々の変化に巻き込まれることになると思われる。そのような、自身の定年までの間にトレンドが変化してしまう世代を「逃げきれない世代」と呼ぶことにしたい。

以下、逃げきれない世代が直面する労働環境と、その中でどのように競争力を高め、戦っていくべきかについて記述する。

労働者同士の過当競争時代

これまで幾つかの制約により労働市場に参加できなかった人材も、クラウドソーシングの普及により新規参入し始める。人口減少による内需の縮小が予想される中、労働者のヘッドカウントは増え続け、労働者間の競争は厳しいものになると思われる。

正規雇用の減少・給与の減少

クラウドソーシングが普及すれば、企業は従業員を正規雇用することは必須ではなくなる。都度、必要に応じて求人を行い、人材を「シェア」していくだけで経営は回るようになってしまう。

また、労働力の需給が緩み、一人当たりの賃金の減少も見られることになることが予想できる。

ロボット・AIとの競合

クラウドソーシングによる労働競争激化の他にも、ロボットやAI(人工知能)など、人間の雇用を脅かす存在がある。

2013年にはIBMからwatsonが、2014年にはソフトバンクからpepperが発表されるなど、将来我々のライバルとなりうるサービス・商品たちがもう既にマーケットに登場している。

2045年のシンギュラリティ

現時点ではあくまで予想にすぎないが、今からおよそ30年後の2045年に「シンギュラリティ」という現象が発生すると言われている。

人工知能が今のスピードで発展を続けると、いつかは人類並かそれ以上に賢くなることになる。そのようなマシンは超知的マシンと呼ばれる。

超知的マシンは、自ら自身より賢いマシンを発明していくことができる。従って、超知的マシンが人類にとって最後の発明であると言われている。それ以降の発明がはすべて人工知能が行うためだ。そのような、人類の知能を超えて爆発的に科学技術が発達していく状況になることがシンギュラリティ(技術的特異点)と名付けられ、2045年に起こることが計算されている。

シンギュラリティが現実のものとなれば、もはやこれまでの常識は通用せず、その時の状況に合わせて柔軟に対応していく力が問われるだろう。

シンギュラリティについては、また別の記事でも独立してまとめたい。

加速する学歴社会

自身が仕事を受注するに値する能力を保有することを証明するために、何らかの形で「証明書」を保持する必要が高まる。

自分の能力を証明してくれる肩書き、資格を手にすることが必要となるだろう。今であれば「資格マニア」と呼ばれてしまうような人こそが、わかりやすく自身の能力を示す「優秀な人」として評価されるのではないだろうか。

高卒よりも大卒、大卒よりも大学院卒が求められる傾向が強まると考えられる。また、同じ大学院卒であればよりレベルの高い大学、実務に直結する学部が重視されることになるだろう。

終わりに

クラウドソーシングの普及、ロボットやAIの発達により、専門性の高い選ばれる人材と、そうではない淘汰される人材に明確に分かれることになる。

専門性を高め、「その他大勢」にならないための戦略を練る必要があるだろう。

クラウドワークスでアンケートを募集してみた

(本記事は下記の参考文献に記載の内容に沿って書いたつもりではありますが、私自身の解釈の誤りなどにより、記事の文章に事実とは異なる記載が含まれている恐れがあります。何かお気付きの点がございましたらご指摘いただきますと幸いです。)

参考

○クラウドソーシングの衝撃(比嘉 邦彦 井川 甲作  NextPublishingメソッド

○株式会社クラウドワークス「2015年9月期通期 決算説明資料

http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS80447/d5970e1f/f675/47d6/9db5/81c85cf7f675/20151112180932457s.pdf

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